最高の家はパートナーで決まる。

モノより大切な「心地よさ」

家づくりを考え始めるとき、多くの人がつい「モノ」に注目してしまいます。豪華な床材、広いお風呂、ピカピカのキッチン――。もちろん、それらも暮らしを豊かにしてくれます。しかし、本当に心から「この家が好きだ」と感じる住みごこちは、それだけでは生まれません。

実は、予算の大小や広さ以上に、住まいの質を大きく左右する「見えない価値」が存在します。それは、設計者の経験と、空間に込められた深い「想い」。

この記事では、なぜ設計者の姿勢が重要なのか、そして最高のパートナーを見つけるためのヒントを5つの章に分けて、丁寧にお伝えします。


1│「良い家」のよくある誤解

立派な素材をふんだんに使った豪華な家。なのに、住んでみると「なぜか落ち着かない」「動線が悪くて暮らしにくい」と感じることがあります。逆に、決して広くはないのに、友人の家を訪れると「なんだかホッとする」「ずっと居たくなる」と感じることも。

この違いは、目に見える豪華さではなく、空間がどれだけ丁寧に「そこに住む人のために考え抜かれているか」の違いです。本当の心地よさは、高価なモノではなく、光の入り方、風の通り道、家族の気配の感じ方といった、細やかな配慮の積み重ねから生まれるのです。


2│すべての線に理由がある

優れた設計には、一本一本の線に必ず「意図」が込められています。

「なぜ、この位置にこの大きさの窓を?」

→ 隣家の視線を避けつつ、気持ちのいい空だけが見えるように。

「なぜ、この壁は少しだけ厚いの?」

→ 寝室とリビングの間に設けて、生活音を気にせずぐっすり眠れるように。

こうした一つひとつの選択には、住む人の暮らしを豊かにするための明確な理由があります。それは、図面上では気づきにくい「暮らしへの想いやり」そのもの。この細やかな配慮が、空間に秩序と、言葉では説明しがたいほどの心地よさをもたらします。


3│同じ広さでも広く感じるワケ

「同じ6帖の部屋」でも、天井の高さや窓の位置、光の採り入れ方ひとつで、驚くほど開放的に広く感じられることがあります。これは、設計者が光や風、視線の抜けといった「人の感覚」を巧みにコントロールしているからです。

例えば、廊下の突き当りに窓を設けて視線を外へ逃がしたり、間接照明で空間に奥行きを出したり。大きな予算をかけなくても、設計者の経験とアイデア次第で、空間が与える印象は劇的に変わります。これが、設計がもたらす「魔法」なのです。


4│設計とは「暮らし」を創ること

設計者の仕事は、ただ図面を引くことではありません。その本質は、そこに住まう人の「未来の暮らしを想像し、デザインする」ことです。

家族が朝起きてから夜眠るまで、家の中をどのように動き、どこで時間を過ごし、何を感じるのか。5年後、10年後の家族の変化まで見据えながら、毎日の暮らしの中に「気持ちいい」「楽しい」と思える瞬間を散りばめていく。これは、カタログからパーツを選ぶだけの作業では決して生み出せない、創造的な仕事なのです。


5│パートナーを見抜く魔法の質問

では、私たちは家づくりのパートナーをどう選べばよいのでしょうか。一つの答えは、「この人、本当に建築や設計が好きなんだな」と感じられる人を選ぶこと。その熱意や誠実さを見抜くために、打ち合わせでこんな質問をしてみてください。

「このプランで、私たちの暮らしのために一番工夫してくれたのは、どんな点ですか?」

この質問への答えに、その人の姿勢が表れます。あなたの家族の物語を深く理解し、楽しそうに自分のアイデアを語ってくれる人。そんな情熱あふれるパートナーこそが、数十年後も「この家でよかった」と思える、最高の住まいを共に創り上げてくれるはずです。

akitsu・秋津

美は、日々の営みの中に。

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