メガソーラー、それは環境破壊。
それはエコか、エゴなのか?
タンチョウが舞う釧路湿原、豊かな森が海を育む千葉県鴨川、風光明媚な伊豆高原。それらは単なる地名ではなく、私たちの「心のふるさと」です。
しかし今、そのかけがえのない場所で重機が唸りを上げ、「クリーンエネルギー」という名の下に、自然が壊されています。これは遠いどこかの話ではありません。あなたの故郷や、大切な人が住む町でも静かに進行する、日本の国土そのものを傷つける行為です。
未来を照らすはずの太陽の光が、なぜ今、大地を苦しめる存在になってしまったのか。その現実から、私たちはもう目を背けることはできません。
1│太陽光発電が約束した未来
私たち一人ひとりが太陽光発電に託したのは、クリーンで持続可能な未来への約束でした。自宅の屋根が小さな発電所となり、エネルギーを自給し、災害時には家族を守る最後の砦となる。そんな「暮らしの自立」こそが、化石燃料への依存から抜け出し、SDGsが掲げる希望の姿だったはずです。
しかし、その輝かしい約束は今、利益を優先する考え方に飲み込まれ、見る影もありません。
2│身近に迫る危機・鴨川の叫び
今、日本で最もこの問題の矛盾が噴出している場所、それが千葉県鴨川市です。ここで起きていることは、私たちの「暮らしの安全」が直接脅かされる、極めて身近な危機です。
2019年の房総半島台風で、私たちは森林の「緑のダム」機能がいかに重要かを痛感しました。それなのに今、急峻な山々の木々が伐採され、ソーラーパネルで覆われようとしています。「次の豪雨で、この山は本当に耐えられるのか?」この切実な問いは、日本中の山間部に住む人々の共通の不安です。
森を殺すことは、水源を汚し、豊かな海を殺すこと。鴨川の森の涙は、私たちの安全な暮らしが失われつつあることへの警告なのです。
3│踏みにじられる聖域・釧路湿原の悲鳴
暮らしの安全とは別に、私たちが決して手放してはならないものがあります。それが、国の宝、地球の財産ともいえる「聖域」です。
ラムサール条約に登録された釧路湿原、その生命線である周辺の森林地帯で、複数の巨大開発計画が進行・検討されています。これは、単なる森林伐採ではありません。タンチョウをはじめとする希少な生物の最後の楽園を破壊し、地球温暖化を抑制する貴重な炭素貯蔵庫を壊す、未来への裏切り行為です。
経済的な利益のために、二度と取り戻すことのできない自然遺産を破壊する。その愚かさに、私たちは気づかなければなりません。
4│巨大発電所という古い神話
なぜ、太陽光発電がこのような問題を引き起こすのか。それは、山を削るメガソーラーが、結局のところ、これまでの大規模な火力発電所や原子力発電所と同じ「大規模集中型」という古い思想の延長線上にあるからです。
かつて、巨大ダムが川の生態系を分断し、多くの集落を水底に沈めたように、「どこか遠く」を犠牲にしてエネルギーを得るという発想そのものに問題があるのです。
私たちは、過去の巨大開発の過ちから何を学んだのでしょうか。発電方法が太陽光に変わっても、自然を敬う気持ちを欠いた大規模開発である限り、本質は変わりません。この旧時代のシステムという見えない鎖に縛られている限り、本当の解決はありえないのです。
5│効率という言葉の落とし穴
これほど無謀な計画がまかり通る根源には、「効率」や「経済性」という言葉を信じすぎている社会の姿があります。
再生可能エネルギーを普及させるという本来の目的が、いつしか「いかに安く、大規模に儲けるか」というゲームに変わってしまいました。そして、法律の隙間を突かれ、声なき山林が、その犠牲となったのです。
これは環境のためのエコではなく、人間だけの都合を考えた、身勝手な行いです。
6│本当の太陽光発電を取り戻す
では、どうすればいいのか。答えはシンプルです。山の木を伐り、自然とのつながりを断ち切るのではなく、今ある人間の生活圏を、未来のための新しい舞台と考えるのです。
住宅や工場の屋根、駐車場の屋根、高速道路の防音壁、そして役目を終えた耕作放棄地。これらの場所にこそ、太陽の恵みを受け止める資格があります。それは自然を壊すのではなく、私たちの暮らしの中に、もう一度自然との良い関係を取り戻す、賢い方法です。
7│エネルギー自給自足という革命
そして、この考え方を突き詰めた先にあるのが、住宅用太陽光発電と蓄電池を組み合わせた「エネルギーの自給自足」です。これこそが、旧来のシステムを根底から覆す、静かなる革命なのです。
各家庭が発電所となり、蓄電池が小さなダムとなる。この「分散型エネルギー」社会が実現すれば、私たちはもはや、遠くの発電所に依存する無力な「消費者」ではありません。自らエネルギーを創り、蓄え、賢く使う「生産者」へと変わるのです。
この変化は、エネルギーの主権を、巨大資本から私たち一人ひとりの手に取り戻すことを意味します。これこそが、エネルギー問題の根本を打開する唯一の道です。
8│未来への手紙としての家づくり
私たちは今、大切な分かれ道に立っています。自然を犠牲にして得られる目先の豊かさを選び続けるのか。それとも、自らの手でクリーンなエネルギーを創り出し、未来に本当の豊かさを手渡すのか。
これから家を建てる方、リフォームを考えている方に、心からお伝えします。太陽光パネルと蓄電池を、キッチンやバスルームと同じ「家の標準装備」として考えてみてはいかがでしょうか。それは、目先の費用を超えた価値を持つ、未来の世代へと送る一通の手紙です。
「私たちは、あなたたちのために、この美しい自然を残す選択をしたよ」と。
山をむやみに伐採しない。川や海を汚さない。その決意は、我が家の屋根という、最も身近な場所から始まります。一つひとつの家庭が灯す小さな光が集まるとき、それは社会の闇を払い、日本のエネルギーのあり方を根底から変える、静かなる夜明けとなるでしょう。
未来の家に住むという選択。それは、単なる建築計画ではありません。この国の未来を、そして愛する子どもたちが生きる世界を、希望で満たすための、私たち一人ひとりに託された、大切な役割なのです。
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